ビジネスの慣用句
白羽の矢が立つの意味とは?
良い意味・悪い意味と例文
「白羽の矢が立つ」は、大勢の中から特に選ばれることです。読み方は「しらはのやがたつ」。一文で使うと「来期の採用チームのまとめ役として、◯◯さんに白羽の矢が立ちました。」。いまは抜擢・任命などの良い意味で使うことがほとんどですが、もとは犠牲に選ばれる意味だったとされ、誰もやりたがらない役が回ってきたときに使うこともあります。このページでは、意味と由来、良い意味・悪い意味の使い分け、「立てる」との違い、場面別の例文20、選ばれたときの返事、類語・英語、間違えやすい形をまとめました。
結論
「白羽の矢」は、白い羽を付けた矢のこと。「白羽の矢が立つ」は、大勢の中から、ある役目にふさわしい人(または物・場所)として選び出されることを表す慣用句です。選ぶ側から言うと「白羽の矢を立てる」になります。
30秒でわかる結論
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| 意味 | 大勢の中から特に選ばれること |
| 読み方 | しらはのやがたつ(「しろはね」ではない) |
| 良い意味?悪い意味? | いまは良い意味(抜擢・指名)が中心。文脈によっては「嫌な役を押しつけられた」という意味にもなる |
| 立つ/立てる | 選ばれた側から言うと「立つ」、選ぶ側から言うと「立てる」 |
| 当たる? | 本来の言い方とされるのは「立つ」。文書では「立つ」と書く |
| 目上に使える? | 自分が選ばれたことを述べるのは問題ない。目上の方の就任祝いには「ご就任」「ご抜擢」と書くほうが無難 |
意味と由来
由来としてよく知られているのは、神が生け贄(いけにえ)として望む娘の家の屋根に、白羽の矢が立てられたという言い伝えです。そこから、大勢の中から選び出されることを表すようになったと説明されます。由来には諸説あり、はっきり決まっているわけではありません。
選ばれる対象は人に限りません。「新工場の建設地として、この町に白羽の矢が立った」のように、場所や商品にも使えます。
Point
「白羽の矢が立つ」=大勢の中から選ばれること。由来は生け贄に選ぶ言い伝えとされる(諸説あり)。人だけでなく場所・物にも使える。
良い意味と悪い意味の使い分け
同じ「選ばれた」でも、選ばれた役目が名誉なものか、負担の大きいものかで受け取られ方が変わります。どちらの意味かは、前後の言葉で決まります。
| 良い意味(いまの中心) | 悪い意味(もとの意味に近い) | |
|---|---|---|
| ニュアンス | 能力や実績を見込まれて選ばれる | 誰もやりたがらない役が自分に回ってくる |
| 一緒に使われやすい言葉 | 抜擢、期待、光栄、身の引き締まる思い | よりによって、気が重い、断れない |
| 例文 | 海外拠点の立ち上げ責任者として、◯◯さんに白羽の矢が立った | 年末の大掃除の取りまとめ役として、なぜか私に白羽の矢が立ってしまった |
| 言い換え | 抜擢される/指名される | 貧乏くじを引く/お鉢が回ってくる |
悪い意味で使うときは、自分のことを冗談めかして話すくだけた場面にとどめます。他人について「白羽の矢が立ってしまった」と言うと、その役目を軽んじているように聞こえることがあるので注意します。
「立つ」「立てる」「立てられる」の違い
違いは誰の立場から言うかです。選ばれる人・物には「に」を付けます。
| 形 | 立場 | 例文 |
|---|---|---|
| 白羽の矢が立つ | 選ばれた側(主語は「白羽の矢」) | 次の店長として◯◯さんに白羽の矢が立った |
| 白羽の矢を立てる | 選ぶ側(主語は選ぶ人・会社) | 会社は次の店長として◯◯さんに白羽の矢を立てた |
| 白羽の矢が立てられる | 選ばれた側(受け身。「立つ」とほぼ同じ) | 記念講演の講師として◯◯先生に白羽の矢が立てられた |
丁寧に言うときは「白羽の矢が立ちました」「白羽の矢を立てました」。自分が選ばれたことを謙遜して言うなら「私に白羽の矢が立ち、身に余る光栄です」のように続けます。
場面別の例文20
会議・打ち合わせで(選ぶ側)
- 来期の展示会の責任者として、昨年の運営を取りまとめた◯◯さんに白羽の矢を立てたいと考えています。
- 候補は三社ありましたが、納期と品質の両面から◯◯社に白羽の矢を立てました。
- 新商品のキャッチコピーは、社内公募の中から◯◯さんの案に白羽の矢が立ちました。
朝礼・社内連絡で
- このたび、新しい支店の立ち上げメンバーとして◯◯さんに白羽の矢が立ちました。皆さんも力を貸してください。
- 全社の業務改善プロジェクトのメンバーとして、私たちの課から◯◯さんと◯◯さんに白羽の矢が立ちました。
- 社内報の新連載の書き手として、営業部の◯◯さんに白羽の矢が立ったそうです。
- (社内メール)来月の新人歓迎会の司会として、◯◯さんに白羽の矢が立ちました。当日の進行についてのご相談は◯◯さんまでお願いします。
面談で(上司から部下へ)
- 取引先から指名があって、今回の案件は君に白羽の矢が立った。期待しているよ。
- 新人研修の講師を誰にするか考えて、◯◯さんに白羽の矢を立てたんだ。引き受けてもらえるかな。
自分が選ばれたときの挨拶で
- 思いがけず私に白羽の矢が立ち、身の引き締まる思いです。精一杯務めてまいります。
- 経験の浅い私に白羽の矢が立ったことに驚いていますが、皆さまのご期待に応えられるよう努めます。
- このたび、プロジェクトリーダーとして私に白羽の矢が立ちました。大役で至らない点も多いかと存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。
お祝いのメッセージで(同僚・後輩へ)
- 大型案件のリーダー、おめでとうございます。◯◯さんに白羽の矢が立ったと聞いて、チーム一同とても嬉しく思っています。
- 全国大会の代表として君に白羽の矢が立ったんだね。これまでの頑張りが認められてよかった。
面接・自己PRで(経験を述べる)
- 前職では、入社三年目で新規事業の立ち上げメンバーとして白羽の矢が立ち、企画から運用まで担当しました。
- 部内で最も顧客対応の経験が長かったことから、苦情窓口の改善担当として私に白羽の矢が立ちました。
注意
面接では、選ばれた理由と、そこで何をしたかをあわせて話すと具体的になります。
人・物・場所の選定(報告書・ニュース調の文)
- 新工場の建設地として、交通の便がよい◯◯市に白羽の矢が立った。
- 創業記念のノベルティには、社員投票で一位になった◯◯に白羽の矢が立った。
悪い意味(くだけた場面で、自分のことを話す)
- 誰もやりたがらない議事録係を決める段になって、一番若い私に白羽の矢が立ってしまった。
- 町内会の役員を決める話し合いで誰も手を挙げず、とうとう我が家に白羽の矢が立った。
白羽の矢が立ったときの返事テンプレート
上司から「君に白羽の矢を立てた」と言われたときの返し方です。引き受ける・確認してから返事する・辞退する、の三つに分けました。
| 返事 | 例文 |
|---|---|
| 引き受ける | ありがとうございます。私でよろしければ、ぜひやらせてください。まずは前任の◯◯さんに引き継ぎの内容を確認します。 |
| 確認してから返事する | お声がけいただきありがとうございます。今の担当業務との兼ね合いを確認したいので、◯日までお時間をいただけますか。 |
| 辞退する | 身に余るお話をありがとうございます。ただ、現在◯◯の案件が◯月まで続くため、十分に務められないと考えております。今回は辞退させていただけないでしょうか。 |
注意
断るときの文面は断りのメールの例文も参考にしてください。
類語・言い換え・反対の表現
| 表現 | 意味・ニュアンス | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 白羽の矢が立つ | 大勢の中から選ばれる | 社内の会話・挨拶・お祝い |
| 抜擢される | 能力を見込まれて、上の役目に引き上げられる | 人事・昇進の話題 |
| 指名される | 名前を挙げて選ばれる | 役割分担、講師・担当の決定 |
| 選抜される | 基準に沿って多くの中から選び抜かれる | 研修・代表の選考 |
| 選任される | 役職などに選ばれて任じられる | 正式な文書・議事録 |
| お鉢が回ってくる | 順番で役目が自分に回ってくる(くだけた響き) | 社内の気軽な会話 |
| 貧乏くじを引く | 損な役回りを引き受けることになる | 悪い意味で使うときの言い換え |
| 選に漏れる(反対) | 選ばれずに外れる | 選考の結果を述べるとき |
正式な文書では、慣用句より「◯◯を◯◯に選任した」「◯◯を担当に指名した」と書くほうが、誰が何を決めたかがはっきりします。
英語で言うと
英語にそのまま対応する慣用句はないので、意味に合わせて言い換えます。
| 英語 | ニュアンス | 例文 |
|---|---|---|
| be chosen for ... | 選ばれる(いちばん中立) | She was chosen for the project leader role. |
| be handpicked | 特に目をかけて選ばれる(良い意味) | He was handpicked to open the new branch. |
| The choice fell on ... | 選ばれたのは〜だった | The choice fell on our team. |
| be singled out | 一人だけ選び出される(良い意味にも悪い意味にもなる) | I was singled out to give the speech. |
間違えやすい形(「当たる」など)
文化庁の平成29年度「国語に関する世論調査」では、「多くの中から、選び出されること」を表すのに本来の言い方とされる「白羽の矢が立つ」を使う人が75.5%、「白羽の矢が当たる」を使う人が15.1%でした。「当たる」は少数派ですが、一定数の人が使っている形です。
| ありがちな言い方 | 気になる点 | 直し方 |
|---|---|---|
| 白羽の矢が当たる | 本来の言い方とされるのは「立つ」 | 白羽の矢が立つ |
| 白羽(しろはね)の矢 | 読み方は「しらは」 | しらはの矢 |
| ◯◯さんの白羽の矢が立った | 選ばれる人に付けるのは「に」 | ◯◯さんに白羽の矢が立った |
| ◯◯さんが白羽の矢を立てられた | 「◯◯さんが選んだ」(尊敬表現)とも読めてしまう | ◯◯さんに白羽の矢が立った |
| (自分が選ぶ側なのに)◯◯さんに白羽の矢が立ちました | 誰が選んだのかがぼやける | ◯◯さんに白羽の矢を立てました/◯◯さんにお願いすることにしました |
| 白羽の矢が立ったので、仕方なく引き受けた(社外向けの文) | 役目を軽んじているように読める | このたび◯◯を務めることになりました |
目上・社外に使うときの注意
自分が選ばれたことを述べたり、同僚の抜擢を祝ったりする場面では、目上の人の前でも問題なく使える表現です。
ただし、もとは犠牲に選ばれる意味だったと知っている人もいます。目上の人や社外の方の就任を祝うメッセージでは、「ご就任」「ご抜擢」とまっすぐ書くほうが誤解の余地がありません。また、社外の方に依頼するときに「白羽の矢を立てさせていただきました」と書くと、こちらが選んでいる立場を強調する形になります。
| 場面 | 避けたい書き方 | おすすめの書き方 |
|---|---|---|
| 社外の方への講演依頼 | ◯◯様に白羽の矢を立てさせていただきました | ぜひ◯◯様にお願いしたく、ご連絡いたしました |
| 目上の方の就任祝い | ◯◯様に白羽の矢が立ったと伺いました | このたびのご就任、誠におめでとうございます |
| 取引先への選定結果の連絡 | 貴社に白羽の矢が立ちました | このたび、貴社にお願いすることに決まりました |
依頼文の組み立ては依頼メールの例文、お祝いの文面は昇進祝いのメッセージ例文にまとめています。
使う前のチェックリスト
- 「立つ」と書いている(「当たる」になっていない)
- 選ばれる人・物に「に」を付けている
- 自分が選ぶ側なら「立てる」、選ばれた側なら「立つ」になっている
- 良い意味か悪い意味か、前後の言葉で伝わる
- 社外・目上の方の就任祝いや依頼では、慣用句より「ご就任」「ぜひお願いしたく」を使っている
この記事の要点
- 「白羽の矢が立つ(しらはのやがたつ)」は大勢の中から選ばれること。人だけでなく場所・物にも使える。
- いまは良い意味が中心。くだけた場面では「嫌な役が回ってきた」という意味でも使う。
- 選ばれた側は「立つ」、選ぶ側は「立てる」。選ばれる対象には「に」。
- 本来の言い方とされるのは「立つ」(文化庁調査では「当たる」を使う人は15.1%)。
- 目上・社外の方の就任祝いや依頼では「ご就任」「ぜひお願いしたく」とまっすぐ書く。
FAQ
よくある質問
「しらはのや」と読みます。「白羽の矢が立つ」は「しらはのやがたつ」です。
いまのビジネスの場面では、重要な役目に選ばれるという良い意味で使われることがほとんどです。ただ、もとは犠牲に選ばれる意味だったとされ、「議事録係として私に白羽の矢が立ってしまった」のように、嫌な役が回ってきたという意味で使うこともあります。
誰の立場から言うかの違いです。選ばれた側から言うときは「◯◯さんに白羽の矢が立つ」、選ぶ側から言うときは「◯◯さんに白羽の矢を立てる」となります。
本来の言い方とされるのは「白羽の矢が立つ」です。文化庁の平成29年度「国語に関する世論調査」では、「立つ」を使う人が75.5%、「当たる」を使う人が15.1%でした。文書では「立つ」と書くのが無難です。
失礼な言葉ではありませんが、由来を気にする人もいます。目上の人へのお祝いでは「このたびのご就任、誠におめでとうございます」のように、まっすぐ伝えるほうが無難です。
使えます。「新工場の建設地として◯◯市に白羽の矢が立った」「発注先として◯◯社に白羽の矢を立てた」のように、場所・会社・商品にも使います。
そのまま対応する慣用句はないため、「be chosen for」「be handpicked」「The choice fell on ...」などで言い換えます。「be singled out」は悪い意味にも取れるので、文脈に注意します。