活用事例
イベントのAI活用
工程別の使い方とそのまま使える指示文
イベントのAI活用で成果が出やすいのは、派手な演出よりも文章・表・確認作業です。この記事では、まず「AIに任せる作業/人が持つ作業」を一覧で示し、次に工程別の変化、イベントの種類別の使いどころ、そのままコピーして使える指示文、外に出す前の確認項目を順に並べます。
結論
結論:イベントでAIに任せやすいのはヒアリング内容の整理、企画・台本・タイムテーブルのたたき台、見積の内訳づくり、案内文、議事録からの決定事項抽出、アンケート自由記述の分類です。逆に安全に関わる判断、クライアントや協力会社との交渉、最終的な案の決定は人が持ちます。境目は「相手がいる作業か」「間違えたときに取り返せるか」の2点で判断します。
早見表:AIに任せる作業・人が持つ作業
まず全体像です。中央の列がAIに渡せる部分、右の列が人が最後まで持つ部分です。迷ったときは「下書きはAI、送る・決めるは人」を目安にしてください。
| 業務 | AIに任せる部分 | 人が持つ部分 |
|---|---|---|
| クライアントヒアリング | 聞く項目の洗い出し、録音の文字起こしと論点整理 | その場での深掘り、言葉にされない要望の読み取り |
| 企画・コンセプト | 案出し、既視感のチェック、比較表づくり | どの案で行くかの決定 |
| 司会・進行台本 | 初稿、言い回しの整え、尺に合わせた削り | 登壇者名・肩書の確認、当日の言い換え |
| タイムテーブル・香盤表 | 所要時間の積み上げ、転換時間の抜け指摘 | 会場・出演者の制約の最終確認 |
| 見積・予算 | 内訳の項目出し、過去案件との比較 | 金額の確定、値引き交渉 |
| 資料・提案書 | 構成案、本文の下書き、要約 | 主張の選択、図版の最終判断 |
| 案内・依頼の文面 | 招待状、リマインド、協力会社への依頼文の下書き | 宛先・日時・金額の確認と送信 |
| 字幕・テロップ | 文字起こしの整形、表記ゆれの統一 | 固有名詞と数字の確認 |
| 会議の記録 | 議事録、決定事項・宿題の抽出 | 決定事項の合意確認 |
| 当日運営 | 想定問答、案内掲示の文面 | 中止・避難・入場制限などの判断 |
| 振り返り | アンケート自由記述の分類、報告書の骨子 | 次回に向けた方針決定 |
Point
見落とされがちなのが見積と制作進行です。頭を使う仕事に見えて、過去の資料を探す、期限を追うといった繰り返しの作業を多く含みます。こうした作業はAIに肩代わりさせやすい部分です。
工程別:AI導入の前後で何が変わるか
受注前から精算までを7つの工程に分け、変化を比べます。体制や案件の規模によって、効く工程の順位は入れ替わります。
| 工程 | これまで | AIを使うと | 得られるもの |
|---|---|---|---|
| ① 営業機会の発見 | 既存顧客からの声がけ待ち | 業界ニュース・周年・組織変更から兆しを拾う | 声がけの材料が増える |
| ② 要件の整理 | ヒアリングを持ち帰って社内で整理 | その場で論点を構造化し、聞き漏れを指摘 | 提案の初速 |
| ③ 企画・コンセプト | 白紙から起案 | たたき台を複数出し、既視感も同時に確認 | 起案時間の短縮 |
| ④ 見積・予算 | 過去資料を探して思い出す | 類似案件をもとに内訳と根拠を並べる | 即答しやすくなる |
| ⑤ 制作進行 | 表計算と記憶で管理 | 全案件の期限と止まっている作業を毎朝通知 | 取りこぼしの減少 |
| ⑥ 当日運営 | 香盤表と無線、現場判断 | 資料の最新版を一つに保つ。判断は人 | 版違いによる混乱の減少 |
| ⑦ 精算・振り返り | 実績を集計して報告書 | 予算と実績のずれを洗い出し、次回の見積に反映 | 次回の見積の精度が上がる |
工程ごとの向き不向きをさらに細かく分けた一覧は工程別の適性マトリクスに、会議の記録への使い方はAI議事録をイベント案件で使うにあります。
イベントの種類別:AIの使いどころ
同じAIでも、イベントの種類によって効く場面が違います。自社の案件に近い行から試してください。
| イベントの種類 | 効く場面 | 人が必ず確認すること |
|---|---|---|
| 社内表彰式・周年式典 | 受賞者紹介文、司会台本、代表挨拶の構成案 | 受賞者の氏名・所属・功績の事実 |
| セミナー・ウェビナー | 告知文、申込受付メール、質疑の想定問答、アンケート分類 | 登壇者の肩書、配信URLと日時 |
| 展示会出展 | ブースの説明文、名刺交換後のお礼メール、商談メモの整理 | 製品仕様・価格の記載 |
| 株主総会・IR説明会 | 想定問答の洗い出し、進行台本の下書き | 法令・数字に関わる表現はすべて担当部署と専門家が確認 |
| ファンミーティング・物販 | 企画案出し、来場案内、注意事項の文面 | 権利者の許諾範囲、入場ルール |
| 懇親会・パーティー | 乾杯や締めの挨拶の案、ゲームの進行台本 | 参加者の食物アレルギー等の扱い |
台本づくりの詳しい型は司会台本の書き方、タイムテーブルの型はタイムテーブルのテンプレートにあります。
そのまま使える指示文(場面別)
AIに渡す指示文の例です。[ ]の中を自分の案件に置き換えてください。どれも「目的・条件・出力の形」をそろえて書いているので、出力の手直しが少なくなります。
ヒアリング前:聞く項目の洗い出し
[業種]の企業が[目的:例 新商品の発表会]を開きます。初回打ち合わせで確認すべき項目を、目的・参加者・予算・日程・会場・演出・運営体制・リスクの区分で表にしてください。聞き漏れると後で困る項目には★を付けてください。
ヒアリング後:録音の整理
以下は打ち合わせの文字起こしです。①決まったこと ②まだ決まっていないこと ③先方の宿題 ④当方の宿題 に分け、宿題には期限が話題に出ていればそれも書いてください。推測で補った箇所は(推測)と明記してください。
[文字起こしを貼る]
企画:たたき台を複数出す
[対象者]向けの[イベント種類]の企画案を、方向性が重ならないように3案出してください。各案に、コンセプト一文・主な演出・想定される弱点を付けてください。よく見かける定番の案は避け、避けた理由も一言添えてください。
司会・進行台本の初稿
次の式次第で、司会の台本を書いてください。丁寧語を基本にし、尊敬語・謙譲語の向きが正しいか見直したうえで出してください。各パートの読み上げにかかるおよその時間も添えてください。
[式次第を貼る]
タイムテーブルの抜けチェック
以下のタイムテーブルを点検してください。転換・移動・マイク受け渡し・押した場合の吸収枠が足りない箇所を指摘し、修正案を表で示してください。
[タイムテーブルを貼る]
見積の内訳づくり
[イベント概要]の見積内訳を作ります。会場・機材・人件費・制作物・演出・運営管理費の区分で、項目の抜けがないか洗い出してください。金額は書かず、項目と、金額を決めるために確認すべき条件だけを並べてください。
案内・リマインドメール
参加者向けの前日リマインドメールを書いてください。日時・会場・持ち物・受付方法・当日の連絡先を入れ、件名は用件が一目で分かるものにしてください。社外の方宛てなので丁寧語を基本にし、二重敬語は避けてください。
協力会社への依頼文
照明会社へ見積を依頼するメールを書いてください。こちらから伝える条件は[日時・会場・規模・演出の要点]です。回答期限と、不明点があれば質問してほしい旨を入れてください。
当日の想定問答
[イベント概要]で、受付やスタッフが来場者から受けそうな質問を、受付・会場内・トラブル時に分けて洗い出し、それぞれ短い回答例を付けてください。安全に関わる質問は「責任者に確認します」と答える形にしてください。
字幕・テロップの整形
以下の文字起こしを字幕用に整えてください。一画面に収まる長さで区切り、言いよどみや繰り返しは削り、固有名詞と数字には【要確認】を付けてください。
[文字起こしを貼る]
アンケート自由記述の分類
以下はイベント後アンケートの自由記述です。内容ごとにグループに分け、各グループに見出しと代表的な声を一つ付けてください。改善につながる指摘は別に一覧にしてください。
[回答を貼る]
実施報告書の骨子
以下の実施メモとアンケート分類から、クライアント向け実施報告書の目次と各章の要点を作ってください。うまくいった点と改善点は同じ量で書き、次回への提案で締めてください。
注意
指示文の型をさらに増やしたい場合はイベント業務のプロンプト集を参考にしてください。
社外とのやりとりは「下書きまで」と決める
クライアント、出演者、会場、協力会社など相手がいる業務は、AIの出力をそのまま外に出すと、言い回しのずれや事実の誤りがそのまま相手に届きます。社内の資料づくりと分けて、次の線を引いておくと安心して他を任せられます。
| 作業 | AIに任せてよい範囲 | 人が必ずやること |
|---|---|---|
| メール・チャットの返信 | 下書き | 宛先・日時・金額の確認と送信 |
| 見積書・請求書 | 項目の洗い出し、計算の検算 | 金額と条件の確定 |
| 出演者・登壇者とのやりとり | 依頼文の下書き | 条件交渉、当日の気配り |
| 会場との調整 | 確認事項の一覧化 | 使用規約の読み込み、担当者との合意 |
| 当日の判断 | 対応方針の候補出し | 中止・避難・入場制限の決定 |
効果が出る順番
全部を同時に変えようとすると、定着する前に忙しさに押し戻されます。次の順番で広げると、早い段階で効果が見え、社内の理解も得やすくなります。
- 01
第1段階:資料のたたき台
企画書・見積の内訳・台本・タイムテーブルの初版づくりから始めます。成果が目に見えやすく、失敗しても外に影響しません。まず「白紙から書く時間」を消すのが目的です。
- 02
第2段階:会議の記録と宿題の管理
打ち合わせの文字起こしから決定事項と宿題を抜き出し、案件ごとに残します。言った言わないの確認が減り、効果を実感しやすい段階です。
- 03
第3段階:進行管理の可視化
全案件の期限と止まっている作業をAI側に持たせ、毎朝確認できるようにします。静かに止まっていた案件が浮かび上がります。
- 04
第4段階:修正依頼の反映
メールやチャットで届いた変更依頼を拾い、資料の更新漏れを防ぎます。
- 05
第5段階:営業機会の検知
受注前に広げます。判断が絡むため、前の段階でAIの出力を信用できるようになってから着手するのが安全です。
空いた時間の使い道は、導入前に決めておいてください。提案の数を増やす、現場の下見に行く、出演者との打ち合わせを厚くするなど、行き先が決まっていないと、空いた時間は別の雑務に吸われます。
AIにデータを渡す前のチェックリスト
参加者名簿やクライアントの未公開情報を外部のAIサービスに入力する前に、次を確認します。
- クライアントとの秘密保持契約で、第三者への開示や外部サービスの利用が制限されていないか
- 使うAIサービスの利用規約で、入力内容が学習に使われるか、その設定を変えられるか
- 参加者の氏名・連絡先など個人データを含む場合、入力しなくても目的を果たせないか(氏名を伏せる、属性だけにする)
- 申込時に示した利用目的の範囲に収まる使い方か
- 社外へ出す文面は、宛先・日時・金額・固有名詞を人が確認してから送る手順になっているか
注意
個人情報保護法第27条第1項は、同項各号に掲げる場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを第三者に提供することを禁じています。利用目的の達成に必要な範囲内で取扱いを委託する場合は第三者に当たらないとされます(同条第5項第1号)が、その場合も委託先への必要かつ適切な監督が求められます(第25条)。外部AIサービスへの入力がどちらに当たるかは契約や規約の内容によるため、この記事では断定しません。迷う場合は専門家に確認してください。詳しくはイベントでAIを使うときの情報管理にまとめています。
AIでは変わらない領域
- 安全に関わる判断:中止、避難、入場制限。責任を負うのが人である以上、判断も人が持ちます。AIは対応方針の候補を出すところまでです。
- 現場の空気を読む調整:登壇者の体調、クライアント社内の力関係、協力会社との信頼関係。プロデューサーの価値が最も出る領域です。
- 最終的な創造の判断:AIは選択肢を広げ、既視感を指摘できますが、「これでいく」と決めるのは人の仕事です。
- 関係者への説明責任:なぜこの予算か、なぜこの構成か。AIが出した根拠を理解したうえで、自分の言葉で説明できる状態が必要です。
注意
任せられない領域が残ることは、導入の障害ではありません。それらに使う時間を増やすために、ほかの作業を渡すのが本来の目的です。
AIの展示会・セミナーで情報を集めるとき
AI関連の展示会やセミナーで道具を探す場合は、行く前に準備しておくと、見て回るだけで終わらずに済みます。
- 困っている作業を一つに絞り、「誰が・何に・どれだけ時間を使っているか」を書き出しておく
- 各ブースで聞く質問を決めておく(日本語での精度、既存の表計算やチャットとの連携、入力データの扱い、1人から契約できるか)
- 自社の過去資料に近いサンプル(個人情報や未公開情報を除いたもの)を用意し、その場で試せるか聞く
- 持ち帰ったら、この記事の早見表のどの業務に当たるかで並べ替えて比べる
道具の比べ方はイベントAIツールの選び方にあります。
よくある失敗と防ぎ方
| 失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 使えそうなときだけ使う | 忙しい時期に慣れたやり方へ戻り、定着しない | 特定の1案件を決め、その案件は必ずAIを通す |
| 初回の出力だけで評価する | 手直しの多さで「使えない」と判断してしまう | 過去資料や指示文の型を整えてから、複数の案件で評価する |
| 確認の工程を外す | 固有名詞・日時・金額の誤りが相手に届く | 社外に出るものは必ず人が確認する、と最初に決める |
| 指示が一行だけ | 誰にでも当てはまる薄い出力になる | 目的・条件・出力の形をそろえて書く(上の指示文を参照) |
| 個人データをそのまま貼る | 契約や利用目的の範囲を超えるおそれ | 伏せ字・属性化してから入力する |
| 空いた時間の使い道を決めない | 効果が見えず、導入の意味が問われる | 提案・下見・打ち合わせなど行き先を先に決める |
この記事の要点
- AIに任せやすいのは、ヒアリング整理・たたき台・台本・タイムテーブル・見積の内訳・案内文・議事録・アンケート分類。
- 社外とのやりとりは「下書きまでAI、確認と送信は人」と線を引く。
- 指示文は目的・条件・出力の形をそろえると、手直しが減る。
- 導入は「資料のたたき台 → 会議の記録 → 進行管理 → 修正反映 → 営業機会」の順に広げる。
- 個人データや未公開情報は、契約・規約・利用目的を確認し、伏せてから入力する。
FAQ
よくある質問
企画書・台本・タイムテーブル・見積の内訳など、社内で使うたたき台づくりから始めると、効果が見えやすく失敗の影響も小さく済みます。次に打ち合わせの記録と宿題の管理に広げると、言った言わないの確認が減ります。
少人数の会社では1人が複数の工程を兼ねることが多く、作業を肩代わりさせた分がそのまま本人の時間になります。1人から契約できる道具を選べば、初期の負担も抑えられます。
初稿や整形は任せられます。ただし登壇者の氏名・肩書、数字、固有名詞は誤りやすいため、人が必ず確認してください。敬語の向き(尊敬語と謙譲語)の取り違えも、読み上げ前に確認する項目に入れておくと安全です。
減らすか増やすかは使い方の方針で決まります。イベント制作では、人を減らすより「同じ人数で扱える案件を増やす」「現場や提案に時間を回す」方向に使うと、品質を落とさずに効果を出しやすくなります。
契約や秘密保持の条件によります。クライアントのデータを外部のAIサービスに入力する場合、秘密保持契約で外部への開示が制限されていることがあるため、事前に確認してください。少なくとも、どのデータをどこに送るかを説明できる状態にしておきます。
まず、氏名や連絡先を入れずに目的を果たせないかを考えてください。個人情報保護法は、本人の同意なく個人データを第三者に提供することを原則として禁じています(第27条第1項)。外部サービスへの入力がどう扱われるかは契約や規約によるため、判断に迷う場合は専門家に確認してください。
使えます。最初は一般的な内容の出力になりますが、過去の提案書や見積書(個人情報を除いたもの)を参照させると、自社の型に近い出力に変わっていきます。データがない場合も、案件を重ねるうちに蓄積されます。