技術
イベントのライブ配信
映像より、音と回線で決まる
配信でクレームになるのは、ほぼ「音が聞こえない」と「止まる」です。映像のきれいさは3番目で、まず音声を会場の音響から直接取り、回線を有線で確保する。これができていれば、残りは誤差です。
結論
ライブ配信の設計は①配信先 ②音声の経路 ③回線 ④映像 ⑤運営体制 ⑥アーカイブの順に決めます。音声と回線が先です。カメラの台数や画質から考えると、最も重要な2つが後回しになります。
配信先を決める
| 配信先 | 向く場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 動画プラットフォーム(公開) | 広く見てほしい | 誰でも見られる。 限定公開の設定を確認 |
| ウェビナーツール | 申込者だけに見せる、質疑を取る | 参加者情報が取れる |
| 会議ツール | 双方向、少人数 | 参加者同士が見える設定に注意 |
| 自社サイトに埋め込み | ブランドを保ちたい | 配信基盤は別に要る |
Point
「誰に見せるか」で決めてください。 申込者だけに見せたいのに公開配信にすると、後から限定できません。逆に、広く見てほしいのにログインを required にすると、視聴数が落ちます。
注意
会議ツールで配信すると、参加者同士の名前が見えることがあります。 取引先同士が同じ画面に並ぶ。設定で参加者一覧を隠せるかを事前に確認してください(ウェビナーと個人情報)。
音声が最優先
- 会場の音響(ミキサー)から直接取る——これが基本
- カメラの内蔵マイクで会場の音を拾わない——反響と空調音が入る
- 登壇者のマイクを通した音が、そのまま配信に行く経路を作る
- 客席の質問は、ハンドマイクを通さないと配信では聞こえない
- 動画を流すときの音も同じ経路に乗せる
- 配信側で音量を監視する人を置く
Point
客席からの質問は、マイクを通さなければ配信では一切聞こえません。 会場では聞こえているので気づきません。登壇者が質問を復唱するか、ハンドマイクを持って走る人を置くかを決めてください。
注意
音量の監視は、配信を実際に視聴して行ってください。 操作画面のメーターだけでは、視聴者に届いている音は分かりません。別の端末で、イヤホンで聞く人を1人置く。
回線
- 有線LANを使う——Wi-Fiは来場者と取り合いになる
- 上り(アップロード)の速度を実測する。下りではない
- 会場のWi-Fiに来場者が接続する前提で測る
- 予備回線——モバイル回線のテザリングなど
- 切り替え手順を決めておく
- 配信PCは他の用途に使わない
- 自動更新・通知を切る
- 電源——バッテリー駆動にしない
Point
測るのは「上り」です。 一般的な速度テストは下りを大きく表示しますが、配信で使うのは上りです。会場のWi-Fiは上りが細いことが多く、有線が取れるかを下見で必ず確認してください(会場の下見)。
注意
配信PCの通知とスリープを切ってください。 画面共有中にポップアップが出る、途中でスリープする、という事故が起きます。
映像
- 1カメラで足りることが多い——切り替えは人手が要る
- スライドは映像として直接取り込む——スクリーンを撮らない
- スライドと登壇者を同時に見せるレイアウトが使いやすい
- カメラの位置——来場者の動線を塞がない(会場レイアウト)
- 照明——登壇者の顔が暗くならないか(音響・照明)
- 背景に何が映るか——来場者の顔が映り込まないか
Point
スクリーンをカメラで撮らないでください。 文字が読めません。PCの画面を直接取り込むのが基本です。会場のスクリーンと配信は、同じ映像を別経路で出します。
注意
来場者の顔が映り込むなら、事前に伝えてください。 申込時と会場の掲示で。映りたくない人の席を用意するのが丁寧な形です(イベント写真とSNS)。
リハーサルと当日
- 01
本番と同じ構成で通す
同じPC、同じケーブル、同じ回線。 別構成のテストは意味がありません。
- 02
実際に配信して、別の端末で見る
社内から視聴する人を立てる。 音量、遅延、画質。
- 03
登壇者に話してもらう
本人の声、マイクの位置、話す速さ。
- 04
スライドの切り替えを通す
共有の開始・停止で事故が起きます。
- 05
動画の再生を試す
音が出るか。 最も多い失敗。
- 06
質疑の流れを決める
チャットか、挙手か。誰が拾って登壇者に渡すか。
- 07
止まったときの手順を決める
何を表示するか、誰がアナウンスするか、どこで復旧するか。
- 08
役割を分ける
配信オペレーター、チャット監視、会場進行は別の人。 兼任すると落ちます。
Point
チャットを監視する人を、配信オペレーターと別に置いてください。 兼任すると、質問が拾えないか、配信が止まるかのどちらかになります。オンライン参加者にとって、チャットが拾われないことは「無視された」と同じです。
注意
止まったときに表示するものを用意してください。 「しばらくお待ちください」の静止画が1枚あるだけで、視聴者は離脱しません。何も出ないと、終わったと思われます。
アーカイブと、残るもの
- 録画するかと、事前に告知したか
- 公開範囲(申込者のみ/一般公開)と公開期間
- 登壇者の許諾——アーカイブの公開まで含めて取る
- 来場者が映り込んだ部分の扱い
- 質疑を含めるか——質問者の声と名前
- 視聴ログの保存期間(ウェビナーと個人情報)
- 資料の配布とあわせて案内する
Point
登壇者の許諾は、アーカイブの公開まで含めて取ってください。 「当日の配信はよいが、残すのは聞いていない」が起きます。依頼の段階で、公開範囲と期間を伝える。
注意
質疑をアーカイブに含めるなら、質問者にその場で伝えてください。 声と、場合によっては名前と所属が残ります。
この記事の要点
- 配信の失敗はほぼ音と回線。 映像のきれいさは3番目。
- 音声は会場のミキサーから直接取る。 カメラの内蔵マイクは反響と空調音を拾う。
- 客席の質問はマイクを通さないと配信では聞こえない。 会場では聞こえているので気づかない。
- 測るのは上り速度。 有線を確保し、Wi-Fiは来場者と取り合いになる前提で考える。
- スクリーンをカメラで撮らない。 PCの画面を直接取り込む。
- チャット監視を配信オペレーターと別に置く。 兼任すると質問か配信のどちらかが落ちる。
FAQ
よくある質問
会場の進行と配信の運営を別の人に分けることです。配信オペレーター、チャット監視、会場進行を兼任すると、質問が拾えないか配信が止まるかのどちらかが起きやすくなります。また客席からの質問はマイクを通さないと配信では聞こえず、会場では聞こえているので気づきません。カメラに来場者の顔が映り込む場合は、申込時と会場の掲示で事前に伝えてください。
配信先、音声の経路、回線、映像、運営体制、アーカイブの順です。カメラの台数や画質から考えると、最も重要な音声と回線が後回しになります。配信でクレームになるのはほぼ「音が聞こえない」と「止まる」で、映像のきれいさは3番目です。
会場の音響ミキサーから直接取るのが基本です。カメラの内蔵マイクで会場の音を拾うと、反響と空調音が入ります。とくに注意が必要なのは客席からの質問で、マイクを通さなければ配信では一切聞こえません。会場では聞こえているので気づかないため、登壇者が質問を復唱するか、ハンドマイクを持って走る人を置くかを決めてください。
必要量は配信設定によりますが、確認すべきは「上り」の速度です。一般的な速度テストは下りを大きく表示しますが、配信で使うのは上りです。会場のWi-Fiは上りが細いことが多く、来場者と帯域を取り合うため、有線LANが取れるかを下見で必ず確認してください。あわせて予備回線と切り替え手順も決めておきます。
スクリーンをカメラで撮らないでください。文字が読めません。PCの画面を直接取り込むのが基本で、会場のスクリーンと配信には同じ映像を別経路で出します。スライドと登壇者を同時に見せるレイアウトが使いやすく、配信側では画面共有の開始と停止で事故が起きやすいので、リハーサルで通してください。
最低限、配信オペレーターとチャット監視は分けてください。兼任すると、質問が拾えないか配信が止まるかのどちらかになります。オンライン参加者にとって、チャットが拾われないことは無視されたのと同じです。会場進行もさらに別の人が担当します。あわせて、止まったときに表示する「しばらくお待ちください」の静止画を用意してください。何も出ないと終わったと思われます。
登壇者の許諾を、当日の配信だけでなくアーカイブの公開まで含めて取ってください。「当日はよいが残すのは聞いていない」が起きます。依頼の段階で公開範囲と期間を伝えます。また質疑を含めるなら質問者にその場で伝えてください。声と、場合によっては名前と所属が残ります。来場者が映り込んだ部分の扱いも決めておいてください。