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費用対効果

AI導入の費用対効果の計算方法
ROIの式・記入表と、稟議にそのまま使える例文

AI導入の費用対効果は、「1件あたりの削減時間×件数×時間単価」から「初期費用+継続費用」を引いて出します。肝心なのは、削減時間からAIの出力を確認・修正する時間を必ず引くことと、数字を他社の事例から借りず自社で測ることです。この記事では、計算式、費用と効果の洗い出し方、記入用の表、試算から本格導入までの判断の基準、稟議や上長への説明にそのまま使える例文をまとめます。イベント制作の業務を例にしていますが、どの業務にも当てはめられます。

更新: 2026-10-16読了:約11分PRODUCER AGENT 編集部

結論

AI導入の費用対効果は、効果(減った作業時間を金額に換算したもの)と費用(初期費用と継続費用。準備・教育・確認にかかる人の時間も金額に換算して含める)を比べて判断します。見落とされやすいのは二つで、一つは確認・修正の時間(入れないと効果を大きく見積もる)、もう一つは数字にしにくい効果(入れないと効果を小さく見積もる)です。

結論:計算は3つの式で足りる

求めるもの式
効果(期間あたり)(今のやり方の時間 − AIでの下書きの時間 − 確認・修正の時間)× 件数 × 時間単価
費用(期間あたり)初期費用(期間で按分)+ 継続費用
費用対効果効果 − 費用、または ROI(%)=(効果 − 費用)÷ 費用 × 100

あわせて、回収期間(何か月で初期費用を取り戻せるか)= 初期費用 ÷(月の効果 − 月の継続費用)も出しておくと、稟議で「いつ元が取れるのか」と聞かれたときに答えられます。月の効果が月の継続費用を下回る場合は、何か月使っても初期費用は回収できません。

Point

判断の基準(ROIが何%以上なら導入するか、回収期間は何か月以内か)は、計算する前に社内で決めておきます。計算した後に基準を決めると、結果に合わせた基準になりがちです。他社の事例や記事に出てくる数字を基準に使うのはやめましょう。

費用の内訳:初期費用と継続費用

費用は、一度だけかかる初期費用と、使い続ける限りかかる継続費用に分けて書き出します。ツールの料金だけを費用にすると、人の時間の分だけ費用を小さく見積もります。

区分項目見落としやすい点
初期費用契約・初期設定管理者アカウントの設定、権限の割り当てにかかる時間
初期費用社内ルールづくり入れてよい情報・入れてはいけない情報の線引き、確認の手順
初期費用指示文のひな形づくり作業ごとのひな形と、出力の見本
初期費用研修・使い方の説明説明する人と受ける人、両方の時間
初期費用既存の仕組みとの連携共有フォルダや案件管理との連携、移行の作業
継続費用利用料人数分の課金か、組織単位の課金か。月払いと年払いで単価が違うか
継続費用追加の利用分上限を超えたときの追加料金、従量課金
継続費用確認・修正の時間この記事の式では効果の側で差し引くため、費用には入れない(両方に入れると二重に数える)
継続費用管理の時間アカウントの追加・削除、ルールやひな形の更新

注意

料金表は、税込か税抜か、月払いか年払いか、1人あたりか組織全体かを確かめてから表に入れます。たとえば各社の公式の料金案内では、Rimoは年払いの月あたりの金額をプランごとに示し(プロプランは3,300円)、Nottaは「表示価格は全て税込価格です」と明記したうえで年払いの総額を示しています(プレミアムの年払いは総額 ¥14,220(税込))。いずれも2026年10月28日に各社の公式ページで確認した内容で、料金は変わることがあります。個別の料金と機能はRimo Voiceの料金と使い方、Nottaの料金と使い方で整理しています。

効果の洗い出し:直接・副次と定量・定性の2軸で整理する

効果は「直接か、副次的か」と「数字にできるか、できないか」の2軸で分けると、書き漏れと二重計上を防げます。

数字にできる(定量)数字にしにくい(定性)
直接の効果議事録・案内文・報告書などの作業時間が減る文面の質のばらつきが減る、書き漏れが減る
副次的な効果浮いた時間で増えた提案の数、扱えた案件の数企画を考える時間の余裕、引き継ぎのしやすさ、担当者の負担感の軽さ

稟議の計算に入れるのは、原則として直接の効果のうち数字にできるものです。根拠を説明しやすく、後で検証もできます。ほかの3つは計算に入れず、「数字に入れていない効果」として別に書き添えます。こうすると、数字は控えめのまま、効果を小さく見せすぎることも避けられます。

注意

副次的な効果を金額にするときは、「浮いた時間で何をしたか」を記録しておく必要があります。記録がないまま金額にすると、根拠を問われたときに答えられません。

自社の数字の測り方

  1. 01

    作業を一つ選ぶ

    議事録の要約、案内メールの下書き、報告書のまとめなど、何度も発生して型がある作業を選びます。

  2. 02

    今のやり方の時間を測る

    何件か続けて測ります。ストップウォッチで、作業の開始から完了までを記録します。

  3. 03

    AIを使った時間を分けて測る

    下書きの時間と、確認・修正の時間を分けて記録します。確認で直した箇所の数も残すと、後で原因を探せます。

  4. 04

    複数の人で測る

    使う人によって時間の差が大きく出ます。一人の結果で決めず、慣れた人と慣れていない人の両方で測ります。

  5. 05

    件数を数える

    その作業が、ひと月や一つの案件で何回発生するかを数えます。繁忙期と閑散期で違う場合は両方を見ます。

  6. 06

    準備と教育の時間を記録する

    ルールづくり、ひな形づくり、使い方の説明にかかった時間を残します。

  7. 07

    表に入れて計算する

    後の章の記入用の表に入れ、効果と費用を比べます。

測った時間は、最初の数回(慣れる前)と、慣れた後を分けて記録します。慣れる前の時間だけで判断すると効果を小さく見積もり、いちばん速い人の時間だけで判断すると大きく見積もります。どの時点の、誰の数字で判断するかを先に決めておくと、結果の説明がぶれません。

計算の流れ(記号で確認する)

金額の例を出すと、その数字が目安のように受け取られるため、ここでは記号で流れだけを示します。自社の値を当てはめてください。

  1. 01今のやり方の時間をA分、AIでの下書きをB分、確認・修正をC分とすると、1件あたりの削減時間はA − B − C(分)。
  2. 02月の件数をN件、時間単価をW円(1時間あたり)とすると、月の効果は(A − B − C)× N ÷ 60 × W(円)。
  3. 03月の利用料をF円、管理の時間をM時間とすると、月の継続費用はF + M × W(円)。
  4. 04準備・教育の時間をP時間、設定などの費用をS円とすると、初期費用はS + P × W(円)。
  5. 05回収期間は初期費用 ÷(月の効果 − 月の継続費用)(か月)。分母が0以下なら回収できない。

Point

A − B − C が小さい、または N が少ない作業は、どれだけ料金が安くても回収に時間がかかります。効果を左右するのは、ツールの料金よりも「対象の作業の選び方」です。

記入用の表

そのまま表計算ソフトに写して使えます。数字は自社で測った値を入れてください。作業ごとに1枚ずつ作ると、効果の出る作業と出ない作業を比べられます。

項目記入する値メモ
対象の作業例:打合せの議事録づくり
今のやり方の時間(1件)分何件か、複数の人の平均か中央値
AIでの下書きの時間(1件)分
確認・修正の時間(1件)分見落とさない
1件あたりの削減時間分上の3行から計算
期間中の件数件ひと月、または一つの案件
時間単価円社内で決めた単価
効果円削減時間×件数×単価
継続費用(利用料+管理の時間)円期間あたり
初期費用(設定+準備・教育の時間)円按分するか、回収期間で見るか決める
費用対効果円効果−費用
ROI%(効果−費用)÷費用×100
回収期間か月初期費用÷(月の効果−月の継続費用)
数字に入れていない効果質の向上、負担の軽さなど

注意

時間単価に何を使うかは、社内で決めておきます。給与だけで計算するのか、社内で使っている標準の単価を使うのかで結果が変わるため、経理や上長と揃えておくと、判断の場で数字の前提を問われずに済みます。

試算・試行・本格導入の判断

「試算する」「試しに使う」「本格的に導入する」は別々の判断です。試算と試行は小さく始められるので、本格導入を決めるより先に進めて、判断の材料を揃えます。

段階やること見る数字次へ進む条件の例
試算対象の作業を選び、今のやり方の時間と件数を測る今の時間×件数(減らせる余地)減らせる余地が、継続費用を上回りそうか
試行少人数・期間限定で使い、AIを使った時間を測る下書きと確認・修正の時間、直した箇所削減時間が、慣れた後も安定して出ているか
本格導入対象の人と作業を広げ、ルールを整えるROI、回収期間、使っている人の割合社内で決めた基準を満たしているか
見直し決まった時期に表を更新する確認時間の増減、料金の変更続ける・広げる・やめるを判断する

段階を追った進め方の全体像はAI導入のロードマップで扱っています。

稟議・社内説明の例文

[ ]の部分を自社の値に置き換えて使ってください。数字は必ず測った値を入れ、測っていない項目は「未測定」と書きます。

稟議書の「効果」の欄

対象業務:[打合せの議事録づくり]
現状:1件あたり平均[ ]分、月[ ]件([期間]に[ ]名で計測)
導入後:下書き[ ]分+確認・修正[ ]分(試行期間[ ]週間、[ ]名で計測)
削減時間:月[ ]時間(=[ ]円、時間単価[ ]円で換算)
費用:初期費用[ ]円、継続費用 月[ ]円
回収期間:約[ ]か月
数字に入れていない効果:[書き漏れの減少、引き継ぎのしやすさ]

上長に試行を相談するとき

[議事録づくり]にAIを試しに使い、効果を測らせていただけないでしょうか。期間は[ ]週間、使うのは[ ]名だけで、費用は[無料版の範囲/月[ ]円]です。終わった時点で、作業時間が実際にどれだけ減ったかを数字でご報告します。

経理に時間単価の前提を確認するとき

AI導入の効果を試算するにあたり、削減した時間を金額に換算する単価を揃えたいと考えています。社内の試算で使っている標準の単価があれば、教えていただけないでしょうか。ない場合は、どの考え方で計算するのがよいかご相談させてください。

試行の結果を報告するとき(効果が出た場合)

試行の結果をご報告します。[議事録づくり]は、確認・修正の時間を含めて1件あたり[ ]分短くなり、月に換算すると[ ]時間の削減です。継続費用を差し引いても月[ ]円の効果があり、初期費用は約[ ]か月で回収できる見込みです。対象を[部署名]に広げることを提案します。

試行の結果を報告するとき(効果が出なかった場合)

試行の結果をご報告します。[案内文の作成]は、下書きは速くなったものの確認・修正に時間がかかり、1件あたりの削減は[ ]分にとどまりました。月の件数も[ ]件と少ないため、この作業での導入は見送りたいと考えています。一方、[議事録づくり]では効果が出ているため、そちらに絞って続けることを提案します。

導入後の見直しで、契約の変更を提案するとき

導入から[ ]か月が経ったため、費用対効果を見直しました。[ ]件のアカウントがこの[ ]か月使われていないため、契約数を[ ]件に減らすことを提案します。料金の改定もあったため、改定後の金額で表を更新しています。

よくある失敗と防ぎ方

失敗起きること防ぎ方
下書きの時間だけで比べる効果を大きく見積もり、導入後に「思ったほど減らない」となる確認・修正の時間を分けて測り、必ず差し引く
他社の事例の数字を使う根拠を問われて答えられない。自社の作業と中身が違う自社で測った値だけを入れる
一人の結果で判断する使う人の差で、効果が大きくも小さくも出る複数の人で測り、慣れる前と後を分ける
数字にしにくい効果を全部捨てる効果を小さく見積もり、続けるべき導入をやめてしまう計算には入れず「数字に入れていない効果」として添える
使う量を絞りすぎる費用を気にして使わないため、効果も出ない対象の作業を決めて、その作業では必ず使う運用にする
ツールの料金だけを費用にする人の時間の分だけ費用を小さく見積もる準備・教育・管理の時間も金額に換算して入れる
一度計算して終わりにする料金の改定や作業の変化に気づかない決まった時期に表を更新する

効果が出にくい条件

  • 件数が少ない作業:1件あたりの削減時間があっても、回数が少なければ準備と教育の時間を取り戻せない
  • 確認に時間がかかる作業:出来上がりの良し悪しを判断するのに時間がかかると、削減分が消える
  • 型がない作業:毎回やり方が違う作業は、指示文のひな形が使えず、AIの出力も安定しない
  • 入れてよい情報が限られる作業:必要な情報をAIに渡せないと、出力の質が上がらない
  • 使う人が少ないのに費用が人数分かかる:契約の単位と、実際に使う人の数を合わせる

向く作業・向かない作業の見分け方はAI導入のメリット・デメリットで整理しています。

稟議に出す前のチェックリスト

  • 判断の基準(ROI・回収期間)を、計算の前に決めている
  • 時間単価の前提を、経理や上長と揃えている
  • 今のやり方の時間を、複数の件数・複数の人で測っている
  • AIを使った時間を、下書きと確認・修正に分けて測っている
  • 初期費用に、準備・教育の時間を含めている
  • 継続費用に、追加の利用分と管理の時間を含めている
  • 料金表の税込・税抜、月払い・年払い、単位(1人か組織か)を確かめている
  • 数字に入れていない効果を、別に書き添えている
  • 社内ルール(入れてよい情報)を決めている
  • 見直しの時期と、やめる条件を決めている

入れてよい情報の線引きはイベントAIのセキュリティで扱っています。

導入後の見直し

  • 案件の区切りなど、決まった時期に表を更新している
  • 確認・修正の時間が減っているか、増えていないかを見ている
  • ツールの料金や仕様の変更を確かめ、変わったら試算を出し直している
  • 使われていないアカウントがないか確かめている
  • 効果が出なくなった作業を、手作業に戻す判断をしている

Point

効果は導入した時点で固定されません。慣れて速くなることもあれば、作業の中身が変わって効果が薄れることもあります。料金が下がれば、以前は見送った作業が対象になることもあります。表を更新し続けることで、続ける・広げる・やめるの判断ができます。

この記事の要点

  • 効果は「(今の時間−下書き−確認・修正)×件数×時間単価」、費用は「初期費用+継続費用」。
  • ROIは(効果−費用)÷費用×100、回収期間は初期費用÷(月の効果−月の継続費用)。
  • 判断の基準は計算の前に決め、数字は他社の事例ではなく自社で測った値を入れる。
  • 計算に入れるのは直接の定量効果。数字にしにくい効果は別に書き添える。
  • 試算・試行・本格導入は別の判断。小さく測ってから広げ、決まった時期に見直す。

FAQ

よくある質問

01AI導入の費用対効果は、どう計算しますか?

1件あたりの削減時間(今のやり方の時間から、AIでの下書きと確認・修正の時間を引いたもの)に、期間中の件数と時間単価を掛けたものが効果です。初期費用(期間で按分)と継続費用を足したものが費用です。効果から費用を引くか、ROI((効果−費用)÷費用×100)で判断します。

02ROIは何%あれば導入してよいですか?

決まった基準はないため、計算する前に社内で決めておきます。他社の事例や記事の数字を基準にすると、自社の作業の中身と合わないことがあります。回収期間(何か月で初期費用を取り戻せるか)もあわせて基準にすると、判断しやすくなります。

03時間単価には何を使えばよいですか?

社内で決めておくのがいちばんです。給与だけで計算するのか、社内で使っている標準の単価を使うのかで結果が変わります。経理や上長と前提を揃えておくと、判断の場で数字の根拠を問われずに済みます。

04数字にしにくい効果は、どう扱えばよいですか?

計算には入れず、「数字に入れていない効果」として別に書き添えます。文面の質のばらつきが減った、引き継ぎがしやすくなった、といった内容です。浮いた時間で何をしたかを記録しておけば、後から数字にできる場合もあります。

05人件費で計算するのは、人を減らす前提だからですか?

そうではありません。減った時間を金額で表すための換算です。浮いた時間を企画の質や顧客対応に回すのか、扱う案件を増やすのかは別の判断で、導入の前に決めておくと社内の理解を得やすくなります。

06無料版で試した結果で、試算してよいですか?

時間の測定には使えますが、本格導入で使う版と機能や上限が違う場合は、その差を確かめてください。また、無料版に入れてよい情報は社内ルールで決めておく必要があります。

07計算してみたら、効果が費用を下回りました。やめるべきですか?

まず、効果が出にくい条件に当てはまっていないかを確かめます。件数が少ない、確認に時間がかかる、型がない、といった理由なら、対象の作業を変えると結果が変わることがあります。それでも下回るなら、その作業ではやめる判断が妥当です。

08導入後は、どのくらいの頻度で見直せばよいですか?

案件の区切りや四半期など、決まった時期に表を更新するのがおすすめです。ツールの料金が変わったときも、その時点で出し直します。一度計算して終わりにしないことが大切です。

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